小栗 虫太郎

紅毛傾城

序 ベーリング黄金郷の所在を知ること

ならびに千島ラショワ島の海賊砦のこと

四月このかた、薬餌から離れられず、そうでなくてさえも、夏には人一倍弱いのであるが、この夏私は、暑気が募るにしたがって、折りふし奇怪な感覚に悩まされることが多くなった。

ちょうどそれは、私の心臓のなかで、脈打ちの律動が絶えず変化していくように、波打つ暑気の峰と谷とだ。はっきりと、しかも不気味にも知覚されるのであった。

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