海野 十三
海野十三氏の弁
「お道樂」の話ですか、それは困りましたね、私は酒もやらないしこの二三年からだの調子をわるくしてゐるので、たまに三軒茶屋あたりを散歩してくる位のところですから、人樣のやうな派手な「お道樂」はありませんね。
電氣ですか、あれはいまでは「お道樂」のやうになつてゐますが、これは專攻した學問で、これでも私は理學士なのです。
佐野昌一の本名で「おはなし電氣學」なんて、素人向の電氣學の入門書を出したり、ご存じのやうに丘丘十郎のペンネームで、科學小説を書いたりしてゐます。
これは「お道樂」以上の自慢話になるのですが、ごらんなさい、この家は停電されても心配ない上に、いつ泥君が現れても平氣でゐられるやうな裝置が、すつかり出來てゐるでせう。自慢はそればかりではありませんよ、これは「寶石」の讀者にも感謝して頂きたい、といふわけは、停電で夜仕事が出來ず困り拔いてゐた横溝正史君に、私が發明(少し大きすぎますかね)した電燈裝置を送つてあげて喜ばれたことがあります。ちやうど「本陣殺人事件」の解決篇が、この燈下で書かれたことは、自慢になるでせう、ハツハハハ。