岸田 国士
落葉日記
一の一
郷田梨枝子は、叔母と並んで東京駅のプラット・フォームに立つてゐる。そして、今着いたその汽車から降りて来る筈の父親の顔をちつとも覚えてゐないのである。
「すぐ教へてね、叔母さま……。いやだわ、いろんな人が顔を突き出して……」
「ああ、お待ちなさいつてば……。あたしだつて間違ふかも知れないよ」
岸田 国士
一の一
郷田梨枝子は、叔母と並んで東京駅のプラット・フォームに立つてゐる。そして、今着いたその汽車から降りて来る筈の父親の顔をちつとも覚えてゐないのである。
「すぐ教へてね、叔母さま……。いやだわ、いろんな人が顔を突き出して……」
「ああ、お待ちなさいつてば……。あたしだつて間違ふかも知れないよ」