中井 正一

物理的集団的性格

1

やや重い感じのする回転音、……フィルムは三フィート、五フィートと記録していく。胸につきあげてくるような緊まった感じ、ちょうど運転手が瞬時もまじろぐことのできないような瞬間に経験する、張った注意と果断、一コマ一コマの構図に眼は繰り入れられてはいるけれども、こころはより多くの関心をレンズのシボリと光線にくばっている。そして、そのなまのフィルムの一々の性格に向ってある親しみ、軽い実験的興味をすらもっている。現像液の中に自分もなかば涵っているといってもよい。

そして、しかも、今の三フィートは、あのプランのどこに位置づけらるべきかが、閃めきのごときキレタ感情を喚起する。いわば、今もぎとられたる現実の一片は、かの描かれたる、換言すれば未来の断片、構成の一要素である。まだ実現せざる組織の見えざる一エレメントであり、その見えざる網の一紐結として、その一コマは喜びを運んでいる。

かつての画家は、その一コマの完成に一人格を投げつけた。今は、その一コマをレンズに託して、そこより出発し、人格が組織の構成体、一つのオルガンとなったように、一コマそれ自身が組織全体の一要素となっている。キノキイのもつ喜悦は、このオルガナイズの情趣の上にある。映画が絵画を引きはなすのはこの一点にある。一つは個性とカンヴァスであるのに反して、他は性格と組織である。

青空文庫の作品カード