岸田 国士

髪の毛と花びら

一

「もつと早く読んでいゝよ」

机の上におつかぶさるやうな姿勢で、夫は点字機を叩いてゐた。

美津子は、コタツにあたりながら、文庫版のメリメの短篇「マテオ・ファルコオネ」を、区切り区切り、調子をつけて読みあげてゐる。

青空文庫の作品カード