アンドレーエフ レオニード・ニコラーエヴィチ
世界怪談名作集
一
三日三晩のあいだ、謎のような死の手に身をゆだねていたラザルスが、墓から這い出して自分の家へ帰って来た時には、みんなも暫くは彼を幽霊だと思った。この死からよみがえったということが、やがてラザルスという名前を恐ろしいものにしてしまったのである。
この男が本当に再生した事がわかった時、非常に喜んで彼を取り巻いた連中は、引っ切りなしに接吻してもまだ足りないので、それ食事だ飲み物だ、それ着物だと、何から何までの世話をやいて、自分たちの燃えるような喜びを満足させた。そのお祭り騒ぎのうちに彼は花聟さまのように立派に着飾らせられ、みんなの間に祭り上げられて食事を始めると、一同は感きわまって泣き出した。それから主人公たちは近所の人々を呼び集めて、この奇蹟的な死からよみがえった彼を見せて、もう一度それらの人々とその喜びを倶にした。近所の町や近在からも見識らぬ人たちがたずねて来て、この奇蹟を礼讃して行った。ラザルスの姉妹のマリーとマルタの家は、蜜蜂の巣箱のように賑やかになった。
そういう人達に取っては、ラザルスの顔や態度に新しく現われた変化は、みな重病と最近に体験した種々の感動の跡だと思われていた。ところが、死に依るところの肉体の破壊作用が単に奇蹟的に停止されたというだけのことで、その作用の跡は今も明白に残っていて、その顔や体はまるで薄いガラス越しに見た未完成のスケッチのように醜くなっていた。その顳※(「需+頁」、第3水準1-94-6)の上や、両眼の下や、両頬の窪みには、濃い紫の死びと色があらわれていた。又その色は彼の長い指にも爪ぎわにもあった。その紫色の斑点は、墓の中でだんだんに濃い紅色になり