宮沢 賢治

まなづるとダァリヤ

くだものの畑の丘のいただきに、ひまはりぐらゐせいの高い、黄色なダァリヤの花が二本と、まだたけ高く、赤い大きな花をつけた一本のダァリヤの花がありました。

この赤いダァリヤは花の女王にならうと思ってゐました。

風が南からあばれて来て、木にも花にも大きな雨のつぶを叩きつけ、丘の小さな栗の木からさへ、青いいがや小枝をむしってけたたましく笑って行く中で、この立派な三木のダァリヤの花は、しづかにからだをゆすりながら、かへっていつもよりかゞやいて見えて居りました。

それから今度は北風又三郎が、今年はじめて笛のやうに青ぞらを叫んで過ぎた時、丘のふもとのやまならしの木はせはしくひらめき、果物畑の梨の実は落ちましたが、此のたけ高い三本のダァリヤは、ほんのわづか、きらびやかなわらひを揚げただけでした。

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