岸田 国士

誰でもない……自分でもない

人は自分で自分をどうすることもできないことがあります。それは、ほかからの力でもなく、自分のうちにあるものといふことすら気のつかないことがしばしばあるのです。男でも女でもそのことはおなじですが、女はことに自分の生涯をなんびとかの手にゆだねるといふ習慣からなかなかぬけきれません。なにごとも運命と考へたり、はかない夢をいつまでも追ひつゞけるのは、まつたくそのためと言つてよいのです。

しかし、また、このことのために、少くとも愛情の世界では女を主体とする複雑な生活が形づくられます。一見、謎めいたものも、そのうちにはあるのです。

この物語はさういふ女たち二つの典型を組合せて、それぞれをどうすることもできない結末に導く一つの、寓話にすぎません。

一

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