岸田 国士
劇作家としてのルナアル
劇作家ルナアルは、ミュッセと共に、僕に戯曲を書く希望と興味と霊感とを与へてくれた。彼に就いて何かを言はなければならないなら、僕は寧ろ黙つてゐたい。僕はあまり多く彼に傾倒し、あまり多く彼の芸術に酔つてゐる。
彼は生涯にたつた六篇の喜劇を書いた。小喜劇を書いた。その小喜劇は、偉大なる力を以て舞台を征服した。彼は既に非凡なる戯曲作家の「息」をもつてゐた。
彼は何よりもまづ「魂の韻律」に敏感であつた。
拙訳『葡萄畑の葡萄作り』によつてルナアルを知つた人は、彼が「沈黙の詩人」であることを忘れてはゐないだらう。