宮沢 賢治
土神と狐
(一)[#「(一)」は縦中横]
一本木の野原の、北のはづれに、少し小高く盛りあがった所がありました。いのころぐさがいっぱいに生え、そのまん中には一本の奇麗な女の樺の木がありました。
それはそんなに大きくはありませんでしたが幹はてかてか黒く光り、枝は美しく伸びて、五月には白き雲をつけ、秋は黄金や紅やいろいろの葉を降らせました。
ですから渡り鳥のくゎくこうや百舌も、又小さなみそさゞいや目白もみんなこの木に停まりました。たゞもしも若い鷹などが来てゐるときは小さな鳥は遠くからそれを見付けて決して近くへ寄りませんでした。