岸田 国士
傍観者の言
昔から、文芸上の論戦ほど、読んで面白く、考へると馬鹿々々しいものはない。
面白いのは、尤もらしいからである。しかし、両方とも尤もらしいのだから、喧嘩にもなにもならず、そのくせ大にやり合つてゐるつもりでゐるから、そこが馬鹿々々しいのである。殊に相手の云ふことに耳を傾けない――傾けてもわからないらしい――論駁などは、甚だ愛嬌がある。
「なるほどね、さういふ主張もあつていいね。但し、おれは、趣味として不賛成だがね。しかし、まあ、大いにやつてくれ。何れ、「もの」を見せて貰はう。案外感心するかも知れんよ」
大概の場合は、これで済むのである。