岸田 国士

『落伍者の群』を聴け

新劇団「心」座が来る廿八日、廿九両日、邦楽座に於て、ルノルマンの、「落伍者の群」を上場するさうだ。「落伍者の群」原名は「Les Rat※(アキュートアクセント付きE小文字)s」――即ち「失意の人々」である。愛と芸術の悩みを悩むものは、均しく彼等の声に耳をかたむくべきである。

こゝで此の作が如何に感動に満ちたものであるかを云々する事はわざと差控へる。たゞわが国に於ける翻訳劇上演の記録から見て、仏蘭西近代劇が甚だしく偏頗な待遇を受けてゐると云ふ事実を知るものは、「心」座の今度の企てに対して、当に十分の注意を払ふべきであることを特記したい。

仏蘭西劇の紹介と云ふことは、今日の日本では、どつちかと云へば、わりの悪い仕事のやうである。といふのは、劇といふもの、殊に近代劇といふものに対する日本劇壇の観念が、仏蘭西劇の伝統と相容れない点が多いからである。

しかしながら、その仏蘭西劇の伝統を、特質を、完全に紹介し得たならば、日本の鑑識ある好劇家は、決してその魅力に鈍感な筈はないのである。

青空文庫の作品カード