岸田 国士
衣食住雑感
どんな着物を着たいなどゝ思つたことは勿論ないが、こんなものを何時まで着てゐるのかなあと思つたことは度々ある。
外に出る時は洋服、家の中では和服に限るとは誰も云ふことだが、雨上りのぬかるみを高下駄でこねゆく風情もまた一興である。これは皮肉ではない。ぢつとしてゐる時ズボンの股ほど気になるものはあるまい。
しかし、和服を着て椅子に腰をかけると、何となく心細い。裾から風がはひるやうな気がする。――風だけならいゝが……。
新調の洋服など着込んで、賑やかな街を漫歩する気持、これは、想像するだけならいゝ。さて、飾窓に映る姿を見て顔を赤めずにはをられるものはない。変な縞のカウスなんかゞ袖から出すぎてゐなければまだしも……。