岸田 国士

シャルル・ヴィルドラックについて

「演劇の本質は、古来の劇的天才が、その不朽の作品中に遺憾なく之を盛つてゐる。吾々は、その本質を探求吟味して、之を完全に舞台の上に活かし、あらゆる不純な分子を斥けて、真に演劇の光輝と偉大さとを発揮せしめよう」――此の主張の下に生まれたのが、ヴィユウ・コロンビエ座である。新奇を衒ふ似而非芸術家と、因襲を墨守する官学的芸術家への目覚ましい挑戦である。

わがシャルル・ヴィルドラックは、此の運動から生まれた最も注意すべき作家の一人である。

彼は既に詩人として特異の地位を占めてはゐたが、大戦後「商船テナシチイ」がヴィユウ・コロンビエの舞台に於て華々しい成功を収めてから、一躍、劇作家としての確乎たる地歩を築くに至つた。

やがて、同じ舞台で、「ミシェル・オオクレエル」が上演された。「われらをより善きものたらしめるまで感動を与へる作」として、劇評家は一斉に此の「地味で素直な」傑作を賞揚した。

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