岸田 国士

十二月的感想

私は平生毛筆を使はない。墨をするのが面倒なのと、硯箱が場所を取るからである。それよりも第一、手が自由に動かない厄介さを知つてゐるからであらう。

私はまた万年筆を好まない。ペン先をインキ壺に浸す、あの伸びやかな気持がなく、書かれた文字の濃淡がもつ、あの特殊なリズムを失ふからである。それよりも第一、買ふしりからどこかで落して来ることがわかつてゐるからかもしれない。

私は洋服を長く著てゐることができない。外国で暮した間でも、自分の部屋へはひると、すぐに日本服に著かへた。

私はまたドテラといふものを著たいと思はない。一二年の間、冬になると家のものが著せるので著てゐたこともあるが、今年から御免蒙らうと思つてゐる。

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