岸田 国士

暫く黙せしめよ

芝居のことについて、今、何も云ふ気にならぬ。根のひからびた樹木がある。枝をためて何にならう。

優れた戯曲がぼつぼつ眼にふれる。楽しいが、淋しい。時代は進みつゝあるに違ひない。来るべきものが来るまで私はもう待てない。

人が何かをしはじめようとすると、そんなことをして何になると云ふものがある。誰もなんにもしないでゐることは、誰もを不安にしないだけである。

私は、自分の力を過信しないやうに努めてゐる。それでも、したいと思ふことをしないではゐられない。

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