岸田 国士

今月の感想

一

雑誌を一度に隅から隅まで読むのは辛いから、私は、さういふ義務を負はない約束で、この文章を書くことにした。

私が今、拾ひあげたい問題といふのは、当節やはり一番人々の注意を集めてゐる日本対世界、民族対人類の問題であらう。これは私自身についていへば、もう解決ずみなのであるが、理窟をこねればこねられないこともない。たゞ、多くの人の議論を読んでみると、たいていは自分の立場をはつきりさせることに汲々としてゐるだけで、それによつて新しい眼界が開けるやうなものは先づ少いといつていゝ。

つまり、さういふ立場からはさういふより仕方があるまいと思はれるやうなものばかりである。が、それも個人の仕事の順序としてはやらなければならないことであらう。たゞ、何時果つべしとも思はれないのが少々焦れつたい。

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