岸田 国士

北支物情

旅行前記

今度文芸春秋社が私に北支戦線を見学する機会を与へてくれたことを何よりもうれしく思ふ。

特派員といふ名義であるが、私のやうなものがジヤアナリストとしての使命を果し得るかどうか疑問である。この点は、社でも多くの期待はかけてゐないらしいから、甚だ肩の荷が軽いわけである。

私は、むろん、作家として眼近に戦争現地の面貌を凝視し、そこに想像を絶した天地の呼吸を感じるであらう。その印象をなるべく具体的に細かくノートするつもりである。

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