岸田 国士
標題のつけ方
小説や戯曲の標題について、いろいろ知つてゐることを書けといふ註文で、これは恐らく試験ならば応用問題に属するのであらうが、私は、創作科の一学生として、今から与へられた枚数の答案を作つてみるつもりである。
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標題とは、つまり、作品の名刺みたいなものである。名刺といふものは、当人の自己紹介に役立つものであるが、それは決して肩書のみがものをいふのではなく、型の大小、紙質、活字の選択配列などが、すべての「人柄」を語り、或は勿体ぶつて滑稽に見え、或は凝りすぎて気障になり、或は無頓着が却つて奥床しく思はれるなど、なかなかデリケエトな性質をもつたものである。
ジュウル・ルナアルの「朗読」といふ短篇の中で、劇作家エロアが自作の脚本を友人のウィレムに朗読して聞かせた後、ウィレムの批評を聴くところであるが、ウィレムは、その脚本を激賞した後、かういふのである。