岸田 国士

言葉の魅力[第一稿]

一

「言葉」といふものは、単に思想や感情を伝へる記号として、日常生活に欠くべからざるものであるばかりでなく、ある一人の使ふ「言葉」は、万人共通の意味をもつと同時に、その人に「固有にあるもの」を現はしてゐるのであつて、この点から見れば、それは人間の「表情」に近いものである。

従つて、語学的に、又は文法的に正しい言葉遣ひといふものもなければならぬが、一方、文学的に、又は感覚的に美しい言葉遣ひといふものも生じるわけである。

この研究は、専門的にはひつて行くと、なかなか複雑で、限られた紙数では論じ尽せないが、此処では、なるたけ「実用的」に、言葉について考へるべきことを述べておかうと思ふ。

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