岸田 国士
言葉の魅力
言葉といふものは、書かれる場合と話される場合とで、余程性質が違つて来るものである。
書かれた言葉、即ち「文章」については、いろいろの研究や模範が示されてゐるが、「語られる言葉」即ち「談話」といふものになると、まだ日本ではそれほど人々の注意をひいてゐない。
文章の善し悪しは、近頃漸く正しい批判に基いて論じられるやうになつたが、「談話」や「弁舌」の標準は、どうもあやふやで頼りない気がする。
「話上手」とか、「弁が立つ」とかいふのを実際聴いてみると、多くは型にはまつた言葉の羅列で、ほんたうの魅力を感じることは少いといつていゝ。