岸田 国士
プログラム
毎月僕のところへも、各種の劇団からプログラムと切符とを送つてくれる。プログラムにはひと通り眼を通すが、切符は利用すること稀である。失礼だが、僕の食慾をそそるに足るものがない。作者も脚本も俳優も演出家も、それらを知ると知らざるとに関係なく、舞台は大体想像がつく。プログラムの匂ひをかげばわかるやうな気がする。
なかには、僕の脚本を無断で上演してゐるのがある。そんなのは、なほさら見なくてもわかる。
体裁だけはなかなか凝つてゐるが、筋書の文章が幼稚でキザで情けないものが多い。
要するに、プログラム一つで、劇団の精神、頭脳、面貌、歩き方が、自ら察せられることは事実だ。どんなに一生懸命でも、どんなに宣伝に骨を折つても、信用できないとなれば誰も観に行く気はせぬであらう。