岸田 国士
新劇倶楽部創立に際して
非常に漠然とした提議の内容でありましたが、それにも拘はらず大体の趣旨に御賛成の上でありませう、今日、わざわざここへお集り下さいましたことは、私として感謝にたへません。
実は、今日の集りは、なるべく固苦しい論議をさけて、いはば、お互に顔を知り合ひ、何かしらそこに、同じ仕事にたづさはつてゐる者同士の親しみ、しかも、めいめいが自分の仕事の領域を通じて、幾分でも共通の利害、共通の希望をもち合つてゐることを感じ合ふことができるやう、話を進めたいと思ふのでありますが。
元来、私は、何事によらず、先頭に立つとか、音頭を取るとかいふことは、その任でないのみならず、性来、甚だ好まないのでありまして、今日の会合の如きも、誰かが提議をして下されば、それに越したことはなかつたのであります。
ただ、事態はやや、それを待つことを許さないといふ気がいたしました。