岸田 国士
劇作を志す若い人々に
自ら劇作家と名乗る資格があるかどうかわからないものが、劇作家たるべき道を説くことは甚だ可笑しいと思ひますが、私を一個の劇作家と見立てゝ、かういふ課題を与へた本誌編輯者の、表面的な責任の蔭にかくれ、私は、自分の信ずるところを述べて見ませう。
一体、「劇作家になる」といふこと、それ自身が問題なのです。
或る批評家の説によれば、「劇作家は生れながらにして劇作家である」べきださうです。此の点、電気技師や小説家が、修業によつてその道に至り得るのとは、根本に於て違ひがあるやうに思はれます。
しかし、此の説は、大きなパラドツクスが含まれてゐる。われ/\が、常に天稟の素質の前に頭を下げなければならないなら、腕を拱いて死を待つより外ないのです。