岸田 国士

戯曲講座

今度明治大学の文科に文芸科といふのができ、一般文芸に関する教育、殊に、創作方面に於ける実際的指導をさへすることになり、私も亦、戯曲講座の一部を受持つことになつた。

自分の専門とはいひながら、「戯曲を書く」といふことについて、私自身、誰に習つた覚えもなく、従つて、その「コツ法」を人に伝へることなど、まつたく思ひもよらぬことなのだが、今仮に、「戯曲並に戯曲創作について、知り又は感ずることを述べよ」といふ註文なら、それはできなくはないと思ふ。

私は、この機会に、自分の戯曲論を整理し、系統づけ、なし得れば、予てはつきりさせてみたいと思つてゐた戯曲家の m※(アキュートアクセント付きE小文字)tier と art 即ち、技術と芸術の区別、更に、戯曲制作の過程を習慣づける作家の稟質とその法則、戯曲の伝統的分類と新しいジャンルの決定など、触れてみたい問題は沢山あるのである。

そして、次に、劇芸術家の素質又は天分の成長に欠くべからざる「劇的感覚の訓練」を、あらゆる方面からの試みをやつてみたいのである。これは主として、感受性の発展に重心をおき、観察と想像の両面から、現実への興味のもち方と、舞台的幻象の描き方を体得させるもので、戯曲の主題、結構、文体を通じて、この感覚の有無強弱が、決定的にその価値を支配するものだからである。

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