岸田 国士
母親の心理学
ある知人の小児科医がかつて私に云つた。「近頃は生意気なお母さんがふえて、診てもらふ子供の病名を先に云ふのがゐる。今これ/\の手当をしてゐるなどゝ得意になつてまくしたてるのがゐるよ。困つたもんだね。まるでお母さんが自分の医学知識に折紙をつけさせようと思つてわれわれの処へやつて来るみたいだよ。さういふのは、得て誤診と相場がきまつてゐる。生兵法大怪我のもとつていふのは医術の場合にもあてはまるんだ」
この話を聞いて、私は、暗然とした。どうしてかう世の中のことはうまくいかないんだらうと思つた。
学校と家庭との協力、或は連絡といふことが屡々教育者の口から叫ばれてゐる。
子供の成績が悪くなり、或は、学校に行くことをいやがる原因について、率直に、母親と学校教師とが研究し合ふ道がどこに作られてゐるか?