岸田 国士

生活文化の建設

今度満洲の特に北満に居住するロシア人の日常生活を視る機会を得て感じたのは、民衆の娯楽といふことである。日本内地でも近頃は「健全な娯楽」が当局者の間でもまた民間でも考へられてゐるやうだが、然し特別な娯楽施設といふものは考へられてゐないやうだ。

現在の生活技術を身につけて、生活自体の中に生活を楽しむ要素を織り込むやうにすれば、そこに初めて健全な娯楽を生み出す用意が出来る。日本人はどうも健全な生活法に関して無関心であり過ぎる。それでは結局外に娯楽を求めるやうになる。それ故に、現代の生活法の研究から先づ始めなければならぬと思ふ。

わが国で考へらるべき文化問題の根本も実はそこにあるのではなからうか。殊に大陸に於ける指導民族としての資格をもつためには、現在のやうな日本人の生活法では非常にまづいと思ふ。一方では各種の仕事の上で優秀な技術と能力を有する日本人が、一とたび生活法といふ点になると非常な弱点を暴露する。これではいけない。日本の国民が挙つて新しい方向に向ふ秋に当つて、先づ我々の生活法をもつ、といふことが大切である。

では、この生活法に関してどんな点に私が気づいたかといへば、例へば住居に就て考へてみよう。簡単なことではあるが煖房設備のない、或は不足した部屋に於ける日本人の生活は、能率を非常に下げる。また健康にも影響する。のみならず屋内に於ける団欒といふことの防碍にもなる。

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