岸田 国士

外国語教育

今日、わが国における外国語の問題を考へるとすれば、およそ次の三点、即ち、この歴史的転換期に直面して外国語教育はいつたいどう取扱はるべきかといふこと、次には国際的な関係が一層複雑微妙になつて来たかういふ時代に、外国語の活用ないし利用がどんな状態にあるか、つまり日本人としていまどの程度に外国語を実際に生かして使つてゐるかといふこと、もう一つは、日本語の海外進出に絡んで、やはり日本語を一応ほかの国から観た外国語として考へてみるといふこと、これらの点が主として問題になると思ふ。

○

最近、従来の外国語教育がいろいろの角度から批判されるやうになつて、例へば、外国語教育が偏重されてゐたといふ見方から、授業時間の削減などが行はれるやうになつた。これに対して、外国語が果して偏重されてゐたかどうか、むしろ今日の時局なればこそ外国語の教育はなほ一層これを重要視しなければならないのではないか、といふ考へ方が対立してゐる。この点についてのわたくし自身の見解は、やはり外国語の教育は一層重視しなければならぬ――といふことを前提とするけれども、しかし、重要視するにしても、今日までの教育方法がかなり根本的に改革さるべきであると思ふ。即ち、外国語教育において真にその成果を挙げるためには、従来の教育方法にはいくつかの重大な欠点があるやうに思ふのである。

まづ日本人が外国語を学ぶ目的をもつと明確に認識する必要がある。従来は、専門的な知識を習得するために、外国語を通じてそれぞれの国の文化に触れてこれを摂取するといふことが、外国語を学ぶ最も大きな目的であつた。また更に一つの大きな目的は、実用的に外国人と或る程度まで自由

青空文庫の作品カード