岸田 国士
優にやさしき心
今こそ日本人といふ日本人は一人残らず、共通の感激、共通の幸福感、そして、共通の矜りをもつてゐるといふことがはつきり云へます。われわれは、われわれの手によつて一日一日新しく、しかも偉大な歴史を書き綴つてゐるのであります。
世界の眼は、悉く、われわれの上に注がれてゐます。日本は何をしでかすか? この興味は、敵と味方とで全くその性質は違ひますけれども、半ば驚嘆を交へた心理的波紋の大きさから云へば、ひとしく、類例のないものでありませう。
ところで、かういふ衝撃を地球の全面に与へた日本の力なるものは、そもそもどこにあるか? それを考へてみなければなりません。
もちろん、国体の尊厳なるところ、民族の優秀なるところにありますが、われわれ国民のすべては、あらゆる立場に於て、この力を自ら信じてゐたかといふと、必ずしもさうは云へません。なぜなら、この力は、時あつて忽然と現はれる力のやうに見え、また、平生、ある点にかけては、かういふ力をもつてなどゐさうにないといふ例が間々あるのであります。