宮沢 賢治

山地の稜

高橋吉郎が今朝は殊に小さくて青じろく少しけげんさうにこっちを見てゐる。清原も見てゐる。たった二人でぬれた運動場の朝のテニスもさびしいだらう。そのいぶかしさうな眼はどこかへ行くならおれたちも行きたいなと云ふのか。それとも私が温床へ水でも灌ぐとこかも知れないと考へてゐるのか。黄いろの上着を着たってきっと働くと限ったわけぢゃないんだぞ。私は今朝は一寸の間つめたい草を見て来たいんだ。だから一人だ。つれて行かない。大事なんだから。

温床とこはれた浴槽。

こゝの細い桑も今はまったくやはらかな芽を出した。その細桑の灰光は明らかで光ってそしてそろってゐる。

すぎなは青く美しくすぎなは青くて透明な露もとまって本当に新らしいのだ。

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