岸田 国士
青年の矜りと嗜み
一
矜りとは自ら恃むところがあることであります。これさへあれば、何ものも怖れずといふ信念です。自負と云ひ、自尊と云ひ、いづれも、己をもつて高しとする精神でありますが、これはむしろ、相手に向つて自分を譲らないことで、いはば競争心の現れであります。しかし、矜りと云ひ、矜持と云ふのは、どちらかといへば、自分自身に対して、しつかりした信頼をもち、いやしくも自分で自分を辱かしめないだけの、ひそかな自信を胸にたゝんでゐることであります。
よく云はれることですが、自尊心といふものは、どうかすると、野蛮人や弱小民族の方が余計にもつてゐて、他から軽蔑されることを極端に気にするあの心理に通じます。これを劣等感のひとつの現れとみるのです。
ところで、さうとばかりは云へません。元来人並以上のものをもつてゐるにはゐるが、それを、たゞもつてゐるだけでは満足しないで、機会ある毎に人に認めさせようとするものがある。これが自尊心、自負心となつて現れます。最もひどいのが「己惚れ」であります。