岸田 国士

選後に

今度は読みごたへのある作品が多く、だいたい粒がそろつてゐて、たいへん張り合ひがあつた。それだけにまたそのうちに幾篇かは、優劣をきめにくい長所に支へられてゐて、一篇を選びだすのに困難を感じた。

いろいろな文学賞があつて、それぞれ特色のある立場で、ほゞ限られた傾向のもののうちから、一応出来栄えのいいものを推すといふことであれば、このうちのいくつかは、おそらく何々賞に値するであらうと思はれた。

文学賞などといふものをさう厳密に考へなくてもよささうであるが、私の望むところは、芥川賞の性格をもうすこしはつきりさせて、なるだけ無理のない結果が得られるやうにしたいものだと思ふ。この賞も創作としての戯曲を除外してあるわけではないのに、一度も選にはいらぬといふのも片手落の感があり、今度も、例へば福田恆存の「キティ颱風」のやうな秀作が予選の中にさへ数へられてゐないことを私は指摘したい。

私は、結論として、ともかくも「夏草」(前田純敬)を第一に推すことにした。

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