岸田 国士

演劇への入口

演劇について語るということは、演劇のある部分について語るということではない。

演劇がいろいろの要素から成っていることはたれにでもわかるが、それらの要素がどんな関係において組み合わされているか、ということは、専門の道にはいってみなければ容易にわからない。

演劇は総合芸術なりという説も、一応は成り立つけれども、文学、美術、音楽というような各種の芸術が、ただ、ある割合で混ぜ合わされているのではもちろんない。それらの芸術をいかに深くきわめていても、それだけで演劇はつくり出せないし、また、味わいつくせるものでもないのである。

こう考えてくると、演劇について正しい知識をうるためには、演劇の一つの窓から、その中をのぞくようなことをしないで、演劇全体のすがたを大きくつかんで、そこへはいっていくたしかな道を自分で捜すことが大切である。

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