岸田 国士

映画のダイアローグについて

一

ある映画のダイアローグが、面白いか、面白くないかといふことを特に取りたてて論じてみたところで、それはあまり意味のないことである。なぜなら、面白いダイアローグは、面白いテーマや面白い人物の面白い組合せから生れるものだから、作品全体のなかに、作者の思想や才能の質として、既にその根がおろされてゐるわけであつて、ある作品の「ダイアローグが特に面白い」といふ場合はおほむね、その作品のダイアローグが、専門の劇作家の手に成り、その劇作家がまた、機智に富んだ喜劇作者である場合に限られてゐるやうに思ふ。

フランス映画に例をとるとよくそのことがわかる。

しかし、一般に、発声映画の魅力の大きな要素の一つとして、ダイアローグを計算に入れることは今日常識となつてゐる筈である。それゆえに、欧米のトーキーは、あらまし、ダイアローグを誰が書いたかがわかるやうになつてゐて、その責任を監督のみに負はせない仕組になつてゐる。

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