岸田 国士

演出者として

近代劇の古典といわれるゴーリキイの「どん底」を文学座がそのレパートリーのなかに入れたことは、そんなに驚くには当らない。

しかし、私が演出を引受けるについては、自分でもその柄でないような気がしなくもなかつた。

第一に、私はロシア文学について勉強が足りず、原作も原語で読めない弱味は、戯曲演出の場合はまず致命的といつていいからである。

それにも拘わらず、私は、少々図々しく構えて、委員会の指名に従つた。やつぱりこの戯曲は、私の演出欲をそそつたものと見える。

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