岸田 国士

未解決の問題

一

編集者は私に「新劇の総決算」といふ課題を与へた。私に特にこれをせよと命ずる正当な理由のあるなしは別として、私は甘んじて、それに応じてみる気になつた。それは、自分自身の総決算を事の序にしてもよいと覚悟をきめたからである。

二

新劇はこれまでなにをして来たか? この問に答へるためには、先づ、新劇とはなんであつたかを明らかにしなければならぬと思ふが、その範囲をここで限定してみてもはじまらぬ。ただ、どうしても必要なことは、その性格に二つの面が重なり合つてゐることを注意することである。即ち、純粋な芸術運動としての面と、芸術を通じての広い文化運動としての面とである。いづれも、ある種の革新を目指してはゐるが、そして、それが同時並行的なすがたを示してゐるものもあるが、大体に於て、この二つの面が当事者によつても、また、それを享け容れる側に於ても、無意識に取扱はれ、この二つが一つのものであるかの如き錯覚に陥つてゐたこと、従つて、運動の方向が絶えずヂグザグの道をとり、時には、互に伸びるべきものを圧殺する結果を生じたことを認めないわけにいかぬ。

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