岸田 国士

「現代演劇論」はしがき

演劇に関する評論、感想、ノオトの類を集めてみたが、それらを系統的に配列する困難は、私が甚だ「学問的に」ものを言つてゐないといふこと、殊に、筆を執つた動機が殆ど常に外部からの註文に依つたといふことに原因がある。

しかし、一方で、これらの文章の何れにも、現代日本の演劇に向けられた不満と焦慮が含まれてをり、それぞれの研究、批判は、「わが演劇文化の向上」といふ空漠たる目的のために、いささか前のめりの姿勢を取つてゐることが、自分ながら滑稽なくらゐである。この姿勢は、それでも、過去十年以上に亘る極めて断片的な論議を、貧しいながら、一貫した主張と見做す手がかりを与へてゐるやうに思ふ。

すなはち、「なぜ日本の新劇は健康に育たなかつたか」といふ問題、更に「どうしたら日本に新しい演劇が生れるか」といふ問題を前にして、あらゆる面からこれに答へようとしたものである。

熱情あまつて言葉の足らないものばかりであるが、私の観点は誤つてゐないと今でも確信してゐるし、既に、これをひとつの立場と称し得るなら、その立場は、明かに将来への希望を示すものであることが実証されつつある。

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