岸田 国士

偶感一束

賑やかな春の芝居も一向に心を惹かない。旅をしよう。旅をしよう。

旅と云へば、旅にゐて、都を想ふ、これも旅の楽しさ、なつかしさである。

まして、こゝ、灯は暗し、某々劇場の花ランプさへ、幻に、奇しくも美しい。

今年は……と、癖になつてゐるのか、人さまに済まないと思ふのか、僕は、ふと、考へる。今年は……と。

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