村山 籌子

プリンス・アド

美しいプリンスは、お名をアドとおつしやいます。いつも真黒なビロードの服に、まつかなマントを背にかけて、三人のおもちやの兵隊を、おつれになつて、森のなかをあるいていらつしやいます。三人の兵隊は、アドの家来で、レクとメツツと、テルといひます。

ある日、アドが、その三人の兵隊をつれないで、たつたひとりで森のなかへはいつてゆきますと、一人の若い男にあひました。その男は、アドを見ると、いきなりアドの前に倒れてしまひました。アドは、おもひやりの深いプリンスだつたので、その男を抱きあげて、

「どうしたのだ。どうしたのだ。」と言ひながら、感じ入つてボロ/\涙をながしました。それをみると、その男は、大声でわあ/\ないてしまひました。

「どうしたのですか。ね。どうぞ言つて下さい。」とアドは、頭をさげて、たのむやうに申しました。その男は、急に元気になつて、パつととびおきて、ひざの泥をはらひながら、

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