村山 籌子
おもちや の めがね
あるところにおばあさんがありました。だいぶ目がうすくなつたので、目鏡が一つほしいと思つて、ためておいたお金をお財布に入れて目鏡やさんに行きました。おばあさんは、
「目鏡やさん、このお財布のなかのお金をすつかりあげますから、一番よく見える目鏡を下さい。」と申しました。目鏡やさんはお財布をしらべましたら、五厘銅貨が廿枚しかありませんので、がつかりしてしまひましたが、十銭でも、もうけなければ損だと思つて、
「おばあさん。これは丁度十銭です。」と言つておもちやの目鏡をあげました。おばあさんは大喜びでお家へそれを持つて帰りました。
夕方夕刊が来ましたので、おばあさんは目鏡をかけてみました。けれども、文字など何一つ見えません。あんまり目を皿のやうに、ひろげたのでおばあさんはつかれて、眠つてしまひました。そしてそれつきり目鏡のことなどは忘れてしまひました。