村山 籌子

こほろぎの死

ある日、うす寒い秋でしたのに、一匹のこほろぎが単衣を着て、街へ仕事をさがしに出掛けましたが、此間までつとめてゐた印刷工場で足の上へ重い活字箱を落としてけがをして首を切られ、けがをした足は益々ふくれるばかりで、どこにも雇ひ手はありませんでした。夕方になつたのか身体中が寒くなつたので家へ帰りかけますと、突然頭の上に、汚い冷い水が一杯浴びるやうに掛つたと思ふと、気が遠くなつて、倒れてしまひました。

気が付いて見ると病院の診察台の上に寝てをりました。傍に院長のまだら蜂が立つてゐて、

「気がついたか? お前は何処の何者だ? 風邪ひきと、丹毒といふ熱病だ。大分よくないから入院だ。入院料は一日二円五十銭だがあるかね?」

こほろぎはお金がないのでびつくりして帰らうとしましたがぐつたりして起き上ることも出来ないので

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