豊島 与志雄

悪魔の宝

一或ところに、センイチといふ猟師がゐました。たいへん上手な猟師でしたが、或日、どうしたことか、何の獲物もとれませんでした。鉄砲をかついで、一日山の中を歩きまはりましたが、小鳥一羽、鼠一ぴきも、見あたりませんでした。

「へんな日だ。今日はだめかな。」

さうつぶやいて、彼は家に帰りかけて、大きな森を通りかゝりました。もう日が沈んで、あたりは薄暗くなつてゐました。

「このおれが、何一つ獲物を持たないで家に帰るなんて、今日はふしぎな日だ。」

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