豊島 与志雄
鬼カゲさま
一
むかし、関東地方を治めてゐた殿様がありまして、江戸に住んでゐられました。その殿様が、病気にかかられて、いろいろ手当をなさいましたが、病気はおもくなるばかりで、いつ亡くなられるかわからないありさまとなりました。
家来たちはたいそう心配しました。ことに、江戸から遠いところにゐる家来たちは、殿様のごやうすがよくわからないので、ひどく心をいためました。
秩父のおくにゐました秩父の司も、たいへん心配しまして、ある日、三峰山の中に、三峰の法師をおとづれました。この三峰の法師といふのは、祈りのみちにくはしく、またいろいろな薬にもくはしいとの、評判のたかい人でした。