豊島 与志雄
スミトラ物語
むかし、インドのある町に、時々、飴うりの爺さんが出てきまして、子供たちにおもしろい話をしてきかせて、うまいまつ白な飴をうつてくれました。大きな大黒帽をかぶり、黒い衣をき、白いながいひげをはやしてゐて、どこからかやつてきてはまたどこかへ行つてしまひます。どこのどうした人かわかりませんが、みんなから、スミトラ爺さんとよばれてゐました。その白い飴がたいへんうまく、その話がたいへんおもしろいので、子供たちにとつては、スミトラ爺さんがやつてくるのがたのしみでした。
白い飴のはうは、皆さんに差上げることができませんけれど、そのおもしろい話のはうを、あらましおつたへしませう。
一 手品使になる話
わたしが十五歳の時のことでした。その頃わたしは、父にも母にも死にわかれ、兄弟もなく、一人ぽつちでしたから、薬屋をしてゐる叔父さんのうちにひきとられて、小僧としてはたらいてゐました。