豊島 与志雄
シロ・クロ物語
一 公園の占師
南洋のある半島の港です。太陽がてりつけて、暑い、けれどさはやかです。木がこんもりとしげり、椰子や棕櫚が、からかさのやうに葉をひろげて、いろんな花がさきほこつてゐます。
その港町の、公園の木かげに、みごとな白い髯をはやしたお爺さんが、ぢめんに毛布をひろげて、占の店をだしてゐます。まはりには、おほぜいの人があつまつてゐます。
このお爺さん、占といふのはつけたりで、じつは面白いことをしてみせるのです。十日に一度くらゐでてくるのですが、町の人たちはよく知つてゐて、薬屋の爺さんとか、白髯の爺さんとかいつてゐます。薬屋がしやうばいで白髯があだ名です。