豊島 与志雄

市郎の店

一

 ある港町の、港と停車場との間の、にぎやかな街路に、市郎の店はありました。店といっても街路の上の屋台の夜店で、その夜店のほんのかたはしなのです。

そのへんは、船や汽車の旅人がたくさんゆききするところで、また、町の人がたくさんであるくところです。それで、夜になると、いろいろな夜店がたちならびました。

市郎の夜店は、市郎のお母さんが出していたものです。いろいろな絵葉書や絵本や玩具などを売っていました。ところが、お母さんが病気になって、夜店に出られなくなりましたので、夜店仲間の、あるおかみさんに、一時そこを預ってもらっているのでした。市郎のお父さんはもう亡くなっていました。

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