中里 介山
大菩薩峠
一
今日の小春日和、山科の光仙林から、逆三位一体が宇治醍醐の方に向って、わたましがありました。逆三位一体とは何ぞ。
信仰と、正義と、懐疑とが、袖をつらねて行くことであります。本来は、まず懐疑があって、次に正義が見出され、最後に信仰に到達するというのが順序でありますけれども、ここではそれが逆になって、懐疑が本体になって、正義と信仰とが脇侍であり、もしくは従者の地位しか与えられていない、というところが逆三位一体と、かりに名づけたもので、三つ一緒に歩いているから三位の観を呈するまでのこと、内心に於ては必ずしも一体でなく、また一体ならんと予期してもいない。
信仰がまず正義を呼んで言いました、