土田 耕平
さがしもの
文吉は、ある夏休の末のこと、親不知子不知の海岸に近い、従兄の家へあそびに行きました。
そして、毎日従兄と一緒に、浜へつれて行つてもらつて、漁夫たちの網をひくのを見たり、沖の方に、一ぱいにうかぶ帆舟を眺めたりしました。磯にうちよせてくる小波に、さぶ/\足を洗はせながら、素足で砂の上を歩くのは、わけてたのしいことでした。
二三日するうちに、文吉は、すつかり、海になれました。従兄につれてもらはなくとも、ひとりで浜へ出かけるやうになりました。
ある日のこと、朝御飯をたべると、すぐに、文吉は浜へ出かけて行きました。からりとよく晴れた日で、お日さまは、沖の方を、あかるくてらしてゐましたけれど、近く山を背負うた浜のあたりは、まだひや/\した蔭になつてゐました。