土田 耕平
雪に埋れた話
お秋さんは、山へ柴刈に行つたかへりに、雪に降りこめられました。こん/\と止めどなく降つてくる雪は、膝を埋め、腰を埋め、胸を埋める深さにまで積つてきました。お秋さんは、大きな柴の束を背負つたまゝ、立ちすくんでしまひました。
「もう助かりやうはない。」
と思つて、目をつぶつて静かにしてゐますと、だん/\気が遠くなりました。そして、何時間たつたことやら分りませんが、誰か自分を呼ぶやうな気がしてひよつと目をあいて見ますと、雪のとんねるが長くつゞいた中に、お秋さんは立つてゐるのでした。
むかうの方が少し明るく見えますので、とんねるの中をとぼとぼ歩いて行きますと、突きあたりが雪の扉になつてゐます。扉をあけて内へはひると、そこは大きな洞でした。洞の隅の方に身の丈一丈もあらうかと思はれる大男が坐つてゐました。