宮原 晃一郎

孝行鶉の話

一

ある野原の薄藪の中に、母と子との二匹の鶉が巣を構へてをりました。母鶉はもう年よりなので羽が弱くて、少し遠いところには飛んで行くことが出来ませんでした。ですから巣から余り遠くないところで、小さな虫を捕つたり、粟の穂を拾つたりして、少しづゝ餌をあつめてをりました。子鶉は至つて親孝行で、毎日朝早くから巣を飛び出して、遠くへ餌をあさりに出かけ、夕方になつて帰つて参ります。そしていろ/\おいしいものを持つて来てはおつ母さんの鶉に喰べさしてをりました。

さうするうちに秋も更けて、丁度中頃になりましたから、冬の間に喰べるものを貯へなくてはなりません。そこである日天気もいゝので、近くの野を謡ひながら、あちこち飛び廻つてをりました。鶉の声といふものはもと/\晴々として大へん威勢のいゝもので、それを聞くと気がせい/\して病気をしてゐるものでもすぐなほるほど愉快なものです。それだのにその上にこの子鶉はとりわけ美い声でそれが「チックヮラケー。」と鳴きますと、本当に深くかゝつてゐる霧もすつかり晴れてしまふやうな気持のよい、美しい声をもつてをりました。

丁度その時、国の王様が、そこの野原に遊びに出ていらつしやいました。すると子鶉の鳴く美しい声をお聞きになりますと、家来に向つておつしやいました。

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